2010.05.26
耐久性を評価する方法はさまざまあります。
今回は表面処理に関しての評価方法を紹介します。
弊社の熱交換器搭載型バーナーENXシリーズでは、耐熱性能を評価するため、SEM観察を行っています。
SEM(Scanning Electron Microscope);走査型電子顕微鏡を使い表面の観察を行います。
SEMは500,000倍の倍率を性能として持っています。理科の実験で用いた光学顕微鏡は10~1,000倍が限界です。光を用いた観察方法と電子を用いた観察方法の違いがここにあります。
今回は50,000倍までの観察をして評価しました。ピント調整とコントラストをあわせるのに大変苦労します。過去に1週間観察室にこもり、この観察だけを行いった経験があります。その時はテレビやPC画面を見るのも嫌になりました。
観察を行いそれをどのように評価するかが、この評価方法の要となります。
2009.06.24
クリープ・・・と聞いてはじめに連想するのは何?
1.オートマチック・トランスミッション車でエンジンがアイドリング時にも流体トルコンが僅かに伝えてしまうトルクのこと・・・
2.コーヒーに入れるクリーミングパウダ・・・
そんなところでしょうか?
しかし金属材でクリープというと「応力が掛かった固体状態でゆっくり変形する」という現象を言います.例えるなら,冷蔵庫から出したばかりの水あめみたいなものと思ってもらえばいいです.
固体なのになんで変形するの?と言われますが,極々微量ながら変形するんです.そしてクリープ変形は高温になると顕著になってきます.
しかしこんな気の長い変形をするクリープの基礎データなんかどこが調べるんでしょうね? ・・・ちゃんと国の機関(正確には独立行政法人)が調べています.
参考→ http://www.nims.go.jp/
http://creptimg.nims.go.jp/index_jp.html
膨大な量のクリープ試験機を並べて,何十年もデータを取り続けています.
確かに民間企業では無理ですね.
研究開発や設計には,このように国の機関が公表してくれる基礎データが大変役に立ちます.
2009.06.12
先々週,学生時代に世話になった研究所の公開日に招待されたので行って来ました.→ http://www.iis.u-tokyo.ac.jp/
世間では「とーだいせーけん」,「せーけん」,あるいは「なまけん」等と呼ばれたりしてます.10年ほど前までは,六本木にありましたが駒場に移転して,とても広くなりました.
高性能熱交換器の基礎と設計はここで学びました.大学の研究所ではありますが,民間との共同研究が盛んで,国内外・民間企業からも多種多様な研究者が出入りしてます.訪れると20~30名くらいは知人らに会いますが,この雰囲気で彼らと話していると「自分の研究開発もがんばらねば・・・」と刺激を受けます.
浜松で会社に篭り,ジックリ腰をすえた開発設計は進める一方で,いつも決まった場所で決まった人たちと会っていると,無意識のうちに気が緩んだり,頭が固くなっているのかもしれません.
時には先端研究や開発をしている人たちに会って話すと,とても楽しく新鮮でした.時には,こういう機会と刺激も必要だと感じます.
帰り際,教育テレビ「サイエンスZERO」に出演している,大島まり先生とも久々に会いました.なんだか出産して随分すっきりと痩せたような・・・
例年,この「せーけん」公開日に集会を開く日立製作所のメンバが今年は集まりませんでした.会社はとても厳しいようです.
来年こそは,スターリングエンジンのネタを皆に言えるようになってこようと思いつつ・・・新宿へ呑みに出ました.
2009.05.28
10日もブランクをあけてしまいました.
前回は,シェル&チューブ熱交換器をバーナーに仕込んだらという所でとまっていましたね.シェル&チューブ熱交換器は主に液体用で,両端から出入りする流体がチューブ内側を通り,側面のポートに出入りする流体がチューブ外側(シェル側)を通るのが一般的ですが,バーナーに仕込むにはチューブの配置を環状(アニュラ配置)にします.
百聞は一見にしかず・・・まずは下記のHomePageを.
http://www.ecom-jp.co.jp/product/burner.html
この図の例では,細い金属チューブ(伝熱管)が400本以上あります.このバーナが密閉された炉内に装着されると,普通のバーナを使った場合より数10%も燃料が節約できるのです.
前回に延べたようにバーナで火を燃やすには燃料と空気(*1)を炉内に噴出して燃やす必要があります.当然,噴出した体積と同じ分だけ炉内の熱いガスが逃げてしまいます.ところが逃げ道に熱回収装置があったなら・・・
炉内の熱いガスが外に出るには,この細い金属チューブを通って出るしかありません.その通過中に熱いガスの熱が上記(*1)の空気に移し変えられて,再び炉内へ戻ることが出来るのです.
ガスや流体は通過できるのに,それがもっている熱だけは通過できずに逆戻りする・・・これが熱交換器の役目です.
別の見方をすれば,熱交換器は熱の関所とも言えますね.
ある仮定の話をしましょう.
炉内はお金持ちの国です.炉内の国民はみんなお金持ちですが,それを国外に持ち出して旅行する事は出来ない決まりです.国外に出る道路はありますが,お金を持ったまま国境を出ようとする人は,反対車線を入国する仲間に自分のお金を託して,国内にお金を戻さなければなりません.
もしもこんな関所と法律があったなら・・・
炉内の国民は自由に出入国できますが,国は価値(熱)を持ち出される事はありません. 熱という価値を保持しつつ,物質だけを出入りさせる・・・ これが排熱回収熱交換器の役目です.一種のフィルタですね.
こんな例え話だと,子供たちにも熱交換器の役目を説明しやすいのではないかな? と1分ほど前に考えました.
実際にはこの「関所」は完全ではなく,出国者の何割かは隠し持ったお金を国外に持ち出してしまいます.炉内国にとっては資金流出です.それが少ないほうが性能の高い熱交換器といえます.資金流出した分,炉内国には資金(熱・温度)が足りなくなるので補わねばなりません.
子供に解りやすく説明するにはいいかな~と考えた話ですが,大人はなんだか切実になってしまいますね...
金融商品という「隠れ方」で,国をすり抜けた大量の価値が昨今の経済危機を招いたわけで・・・
と,うまくまとまった所で,次回は「高温空気燃焼」のお話を.
2009.05.18
モノを高温まで加熱するのには伝熱,赤外線輻射,燃焼ガスであぶる,最近流行りの誘導加熱(いわゆるIH)や電子レンジのようにマイクロ波(2.45GHz)を使った誘電加熱など様々な方法があります.ここでは燃焼ガスを使う・・・すなわち火を使う方法について述べましょう.燃焼装置は小さく簡単な装置でも高密度に熱エネルギを発生させる事が出来る事を日々の生活でも実感しますよね.
ところが,熱い空気やガスが充満した炉内に火を吹き込む・・・つまり燃焼ガスを吹き込むと,吹き込んだ燃焼ガス体積と同じ体積の熱い炉内ガスが炉から押出されてしまいます.しかも熱いまま・・・もったいないですね. 上記の伝熱,赤外線,IH,マイクロ波などを使った加熱ではこうした無駄は生じません.火を吹き込むという事をしなければならないために,どうしても無駄が出てしまうのです.
そこで,熱い炉内ガスの逃げ道を1箇所に絞ってしまう事が出来ないか?と考えましょう.炉内を密閉空間にして1箇所だけ外へ出る排気管をつければいいわけです.そしてこの排気管に熱だけを回収する装置を付けたらどうでしょうか? ガスや空気(流体)は通すけれど,その熱だけは通さない装置・・・それが「熱交換器」というモノです. 特に,捨てられる熱・・・排熱を回収する目的の熱交換器を”Recuperetor” 「レキュペレータ」と呼びます.ちょっと噛みそうな単語ですね.しかし,これがすごい省エネ効果をもたらします.
さて,それは具体的にどんなものでしょうか? 典型的な熱交換器の1つに , “Shell and Tube” 「シェル&チューブ」熱交換器というのがあります.沢山のメーカから製造・販売されていて,食品から原子力発電所まで幅広く使われている熱交換器の定番中の定番です.
参考:
http://www.zensin.co.jp/heat/hcl.html
http://www.kamui.co.jp/seihin/suirei/suirei.html
http://www.ncljp.com/exchanger/unper/shelltube.html
http://www.hinopile.co.jp/product/shell_tube.html
と,Webサーフィン(死語?)をしたところで今日はここまで.
次回は「シェル&チューブ熱交換器」をガスバーナに組込んだら? というおはなしです.
2008.06.04
触媒式脱臭装置の設計の為には排ガスの内容を十分把握しておく事が必要です。その他にも装置設計において以下のような数値が重要となります。
1.風量(対象処理ガスの風量)
2.温度(対象処理ガスの受入温度)
3.圧力(対象処理ガスの受入時点の圧力)
4.ガス組成(水分量、O2濃度などの臭気ガス以外の成分)
2008.04.09
触媒式脱臭装置のシステム構成は、まず排ガスを誘引しフィルターにてダストを除去する。臭気ファンにて昇圧し、熱交換器で臭気ガスを予熱してバーナー・電気ヒーターなどの加熱機で反応に必要な温度まで加熱します。加熱されたガスは触媒を通過し酸化分解された後、熱交換器にて放熱後排気ダクトにより大気放出される。一般的にはこの様なシステムになっており、排ガス中の溶剤(可燃性ガス)濃度が高い場合には熱交換器受熱側で反応に必要な温度まで昇温する事が出来燃料不要の『自燃』状態に入ります。しかし、装置の立上げ時などは所定の温度まで上昇するだけの熱量が必要となります。
2008.03.31
触媒脱臭装置を構築するに当たり、排ガス中に触媒毒が含まれている場合はこれを事前に除去する方法が最も確実な方法である。しかし、生産工程や製品品質により排ガス中の触媒毒を除去する方法は非常に困難である。通常シリコン・リン・有機金属化合物などは触媒前段に前処理材を設置し、吸着させたり無害な物質に反応させ触媒を通過させるなどの対応策をとる事が多い。触媒毒の濃度にもよるが前処理材も使用期間により効果が劣化し、通過した触媒毒が触媒の効果を低減させます。前処理材は触媒と比較して安価な為、一定のメンテナンス期間で交換し、触媒寿命の延命を計るために設置しています。
2008.03.17
触媒式脱臭装置における触媒毒とは排ガス中に微量に含まれていても触媒の性能に悪影響を及ぼす物質である。触媒毒には触媒の活性を一時的に失活させるものと、永久に消滅させるものがあります。貴金属系触媒に対する触媒毒は下記したものがあります。
一時被毒物質:触媒の表面に付着し見かけの活性を阻害する。担体と化合して担体組成を変化させる。
・物理的に吸着する物質(タール、高分子物質)
・化学被毒物質(塩素、臭素、フッ素、カリウム、ナトリウム)
永久被毒物質:担体と硫化物を生成し担体組成を変化させる。触媒の表面に付着し細孔を塞ぎ、触媒の表面積を減少させ触媒活性を減少させる。
・化学被毒物質(硫黄、リン、ケイ素、ヒ素、鉛、スズ、アンチモン、亜鉛、水銀)
2008.03.12
触媒は通常200℃~400℃程度で使用されますが、臭気濃度が高い場合には反応熱により触媒表面上で温度上昇し熱劣化を起します。熱劣化の原因は触媒表面上の白金粒子が高温になると流動し、凝集化するため活性点が減少する事と担体のアルミナなどの表面積が減少するためです。臭気濃度が濃く高い反応熱が予想される場合には希釈などの対策により500℃以下にコントロールする必要があります。対策が取れない場合などは高温用触媒としてアルミナを坦持したものを使用すれば700℃程度までの連続使用が可能となる場合も有りますが、臭気成分により反応率に向き不向きがあるため注意が必要です。